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借金が消える相続放棄、借金が消えない相続放棄

相続放棄? 財産放棄? 遺産放棄?

当事務所では遺言書や遺産相続に関するいろいろなご相談をお受けしておりますが、ご相談者の言葉遣いにン?と考えさせられることが度々あります。

その一つが「相続放棄」です。ほかに「遺産放棄」という言葉遣いをする方もいらっしゃいますし、「財産放棄」という言い方をする人もいらっしゃいます。家庭裁判所で行う手続であれば、「相続放棄」が正しいのですが、言葉があっていても意味を取り違えている方もいます。

相続放棄に関する2通りの相談

言葉はいろいろですが、相続放棄に関するご相談は、ほとんどが次2つのいずれかに分かれます。

  1. 財産よりも借金が多いようなので、相続放棄した方がよいか?
  2. 他の相続人から「相続放棄しろ」と迫られているがどうしたらいいか?

上記1の場合には、本来の意味での相続放棄の手続、すなわち家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出することが必要です。2の場合には、2通り以上の対応方法が考えられます。

本来の「相続放棄」の効果

家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し受け付けられてから、正式に「受理」されるまでは、おおむね2、3週間かかります。実際に家庭裁判所に相続放棄の申述書が「受理」されると、申述をした人は「はじめから相続人ではなかった」とみなされます。相続人ではないのですから、当然財産を受け取ることもないし、借金を引き継ぐこともなくなります。被相続人(故人)の借金とは、相続人としては、法的に無関係になります(注:保証人であれば話が変わってきます)。家庭裁判所では相続放棄の申述の「受理証明書」を発行してくれますから、それをもって債権者に説明することができます。

この本来の相続放棄でよく問題になる点として、ある相続人が相続放棄の申述をして「はじめから相続人ではなかった」とみなされた結果、相続人の順位が繰り上がって、別の人が新たに相続人となるということがあります。元の相続人は借金を逃れるために相続放棄をしたわけですから、この新たに相続人になった方(当然、元の相続人とはご親戚)も相続放棄をする必要が出てきます。この「親戚に迷惑がかかるのがイヤ」という理由で、相続放棄に二の足を踏まれる方もいらっしゃいます。

もう1つの「相続放棄と呼ばれている処理」

よくあるご相談の1つに「他の相続人(長男など)に、放棄をしろと迫られている」とうのがあります。このようなケースでは、相談者の取得財産をゼロとした遺産分割協議書や「特別受益証明書」「相続分なきことの証明書」といった、他の相続人が都合の良いように用意した書類に、実印を押すよう迫られている場合がほとんどです。これは上に書いたような本来の相続放棄とは全然意味が違います。

このような形で放棄をさせられた場合、遺産を受け取れないという点は同じですが、大きく違う点があります。それは、このような書類に印をついたことをもって、借金の引継ぎを免れることが出来ないという点です。

本来の相続放棄が、いわば家庭裁判所に「相続人の立場を辞退することを認めてもらう」手続であるのに対し、このような処理は、「単に、相続人同士の内々の取り決め」であり、第三者である借金取りには影響を与えません。「他の相続人から放棄の書類を渡されて実印も押した。だから私は借金とは関係ない」とは言い切れないのだ、ということは知っておいて下さい。

なお、これらの書類は借金を逃れる役には立ちませんが、登記などの名義変更には使えますので(だからこそ印を押せと迫ってくるのですが)、署名押印する際には「この書類はどういう書類なのか」を十分に検討・確認して下さい

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